阿弥陀岳北稜(八ヶ岳) 厳冬期バリエーションルートに初挑戦

八ヶ岳

この記事は2019年12月29日の山行記録となります

どうも、ヨシタツ(@yoshitatsu696)です。

「夏山のバリエーションルートは経験したから、今度は冬山のバリエーションルートを登ってみたい」

登山でステップアップしてくるにつれ、そんな風に考えている方も多いのではないでしょうか?

僕もそう思い、2019年の年末に冬期バリエーションの入門ルートとして人気の阿弥陀岳北稜に行ってきました。

今回は山岳会のメンバー合わせて4人のパーティ。天候にも恵まれ充実した山行となりましたので、レポートしていきたいと思います。

基本情報

阿弥陀岳 標高:2,805m

時期:2019年12月29日

メンバー:ヨシタツ、他3名

タイムライン

4:18八ヶ岳山荘ー5:14赤岳山荘ー7:32行者小屋ー10:49北稜取付き(1P目)ー13:50阿弥陀岳山頂ー14:25中岳のコルー14:55行者小屋ー18:10八ヶ岳山荘

【行動時間】約14時間

参考にした地図

八ヶ岳山荘(前泊)

年の瀬も差し迫る中、2019年の登り納めとして臨んだ今回の山行。

前夜発の日帰り行程のため、今回は僕の提案で麓の八ヶ岳山荘にある仮眠室に泊まることになりました。

天候の都合で1日前倒ししたため前日の予約となってしまいましたが、山荘に電話すると普通に空きがありました。

ここ八ヶ岳山荘の仮眠室は、1泊2,000円で暖かい布団でぐっすり眠れちゃうんです。

初めて泊まったというメンバーにも好評。あまりの快適さに、ずっとここで寝ていたい気分になったらしいです。

八ヶ岳山荘HP▼

見つかりませんでした!

八ヶ岳山荘~南沢~行者小屋

3時間ほどの仮眠後、準備をして4時頃に八ヶ岳山荘を出発。

赤岳山荘までは車で入れるのですが、今回の車は4WDでもなく、チェーンも準備できなかったので、仕方なく歩いていくことにしました。

傾斜が少し出てくると足元が結構滑るようになってきたので、チェーンスパイクを装着します。

ちっちゃい爪だけど、全然歩き心地が違いますね。チェーンスパイク万歳。

だんだん夜も明けてきて、雪景色が露わになってきます。美しい。

そんなこんなで、行者小屋に到着。

行者小屋~北稜取付き

行者小屋では既に多くの登山客が準備を進めていました。

僕らもハーネスなどの準備を進めます。以前赤岳に来たときも思いましたが、朝方の行者小屋付近はマジで寒い。

準備中、グローブをしてるのに手が凍りそうなぐらい冷たくて、悶えました。

メンバーも「今日ビレイとかできるん…?」と早くもテンション下がり気味。

準備するのにも四苦八苦し、いざ出発します。

しばし中岳沢方面まで歩いていきます。

阿弥陀岳の方角を示す標識が現れます。

少し進むと、トレースが分岐となって残っていました。

本当は右側が北稜取付きへの道なのですが、僕らは中岳沢に少し入ってから取付きに入るものと思い込み、左側のトレースの方へ進んでしまいました。

中岳沢を急登していきます。

ふと右側に視線を向けると、阿弥陀岳の山頂へ繋がる尾根に人が登っているのが見えました。

ここで察しました。

「ワイら、取付き間違ってるYO!!!」

このまま真っすぐ登っていくと一般道の「中岳のコル」に行き着き、バリエーションルートでもなんでもなくなってしまいます。

仕方ないので、向こうの尾根までトラバースすることに。 安全をとって、少し下ります。

ここまでけっこう急登したので、なんだか損した気分…

藪漕ぎしながらトラバースすると、明るい尾根に出ました。

この尾根も急登のため、ガシガシ登っていきます。だいぶ汗だくになりました。

最初の目印としていたジャンクションピークは遥か下。既に通り過ぎてしまっていたようです。

そしていよいよ、岩稜の取付きへ…

1P目

ようやく北稜の1P目(第一岩稜)に到着。 それなりに大きな岩がそびえています。

既に他のパーティが取付き始めていました。僕らのパーティは遅れをとってしまったため、最後となったようです。

ルートとしては岩の正面から登るルートと、左奥から登るルートの2つがありました。

下の写真は正面から登るルート。途中にペツルのボルトが打ってあるのが確認できました。

僕はパートナーのM好さんと左奥のルートから登ることになりました。

左奥ルートの最下部には下の写真のようにボルトが2本打ち込んでありました。恐らくこれはビレイヤー側のセルフビレイ用と思われます。

写真には撮れませんでしたが、左奥ルートの途中にはハーケンが1ヶ所打ってあったので、そこでクライマーの安全確保としてのプロテクションは取れます。

また足場や手で掴むホールドは豊富にありますが、なにせアイゼンとグローブを装着しながらのクライミングのため、思った以上に難易度が上がりますね。

登りきったたところのテラスには、残置スリング付きの立派なビレイポイントがありました。

ここでピッチを切らずとも更に先へ進めるのですが、前のパーティが詰まっているため、一旦ここで支点構築します。

1P目を登るメンバーのI宮さん。

ビレイするI井さん。

2P目

2P目はパートナーのM好さんにリードしてもらいます。ビレイポイントから少し右上しながら登っていきます。

登っていくと、大きなピナクルが。

このピナクルに180cmスリングを掛けてプロテクションを取ります。一旦ここでビレイしてもらうことになり、僕はフォローで登ります。

しかし数メートル進んだ先の岩場にボルトが打ってあり、距離的にさほど変わらないため、こちらでビレイした方が良いと思います。

3P目

3P目は再び僕がリード。

しかし下から眺めてみても、人工的なボルトなどは無い様子…

3~4mほど上に、かろうじて小さく突き出ている岩が見えました。

そこにスリングを掛けてプロテクションが取れそうだと判断したため、勇気を持って登り始めます。

そして無事プロテクションを取った後は、アックスを使いながら数メートル雪のある斜面を登ります。

ランナウトするので落ちられません。

そして、事前情報で得ていたナイフリッジが登場。

まぁまぁ狭いですが、足場はしっかりありそうだし、ナイフリッジの手前にもペツルのボルトが打ってあります。

慎重に進んでいけば、必要以上に恐れることもないと思います。

ナイフリッジを渡ると、雪で隠れていた灌木で支点が取れました。

こうして見ると、なんだかすごいことろを登ってるみたいですね…

ここをクリアすれば、あとはもう山頂を目指すだけ。

阿弥陀岳山頂

ナイフリッジから少し急登したのち・・・無事山頂に到着!

晴れ渡る青空の中、360°のパノラマが美しかったです。

阿弥陀岳の山頂は、数年前の無雪期に南稜から登った経験がありますが、当時はフォローで付いていっただけ。

今回は自力で登頂できたので、感慨深いものがあります。

しばし景色を堪能した後、既に14時近くになってたので足早に下山を始めました。

阿弥陀岳山頂~行者小屋~八ヶ岳山荘

下りは、取付きで間違えた中岳沢を使いました。

ただし冬季は雪崩の危険性があるので、中岳沢は使わず文三郎尾根まで回り道して下ることが推奨されています。

しかしこの日は多くの登山者も問題なく下っていたので、時短のため僕らも中岳沢を下りました。

行者小屋から八ヶ岳山荘まではひたすら歩き。朝の出発から12時間は経過していたので、もうくたくたの状態。

正直、行者小屋でテント泊にしておけば良かった…と思いました。

結局、日も暮れてヘッデン歩きになってしまったのですが、18時頃にようやく八ヶ岳山荘に帰還。

なんとも濃い~1日になりました。

下山後の温泉

下山後は「もみの湯」で温泉に浸かりました。入浴料は大人500円です。

長時間行動した後の温泉は癒されますね。

もみの湯HP▼

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持っていった主な装備

今回の山行でパーティとして持っていた主な装備を紹介します。

  • 50mダブルロープ(Φ8mm)×2本

4人パーティのため、ダブルロープを2本用意しました。

ダブルロープですが実際には1組1本ずつで、シングルロープと同じような使い方をしています。ダブルロープの方が軽量化には良いですね。

  • 180cmスリング

2P目のピナクルで支点を取るときに、長めの180cmスリングが重宝しました。それ以下の長さだと、ちょっと足りないと思います。

  • クイックドロー×2本

ボルトが打ってあるので、クイックドローがあると便利です。

いわゆるアルパインヌンチャク(スリングとカラビナを繋げて自作したもの)でも良いのですが、既製のクイックドローの方がサッと取り出せますね。

まとめ:入門には良いけど、侮るのは禁物

感じ方は人それぞれだと思いますが、阿弥陀北稜は入門ルートだからといって侮らない方が良いと思います。

冬のバリエーションに慣れていて阿弥陀北稜を登った人の話では、

「どこが核心なのかわからなかった」

「あっという間に終わっちゃった」

というような、楽勝だったという感想を聞きました。

しかし僕自身、アイゼン・グローブを装着してのクライミングに慣れていなかったせいで、想像していたよりも怖さを感じました。

その人の経験やスキル、コンディションによっても体感の難易度というのは変わってくるのだなということを、改めて感じましたね。人の話を鵜呑みにするのは危険です。

個人的には、もう少し事前に岩場でアイゼントレーニングの練習をしておけば良かったと思いました。

これから冬季のバリエーションルートにチャレンジしてみようという方は、十分に練習を積んだり、装備をしっかり整えることを怠らずに臨んでください。

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